AIの詩 vs 人間の詩 結果発表!!

先日(とは言ってもだいぶ過ぎてしまいました汗)の学校祭ではたくさんの人に足を運んでいただき、ありがとうございました。
そこの展示に「AIの詩 vs 人間の詩」というものがありまして、前々から皆様にその投票結果をHPにて公表するとしていました。
タイミングはだいぶズレてしまいましたがようやく公表となります。

まずは結果発表の前に、ルールをおさらいしましょう。

・同じテーマ、同じタイトルで、部員とAIがそれぞれ詩を作る。
・作者を伏せた状態で掲示し、来場者にアンケートを取る。

集まったのは20票と、なんというか、まあまあ? かなって(どういうことだよ)
それはさておき、とりあえず作品とともに投票の割合を示してみます。。
部員AI
No.1 テーマ「蠍」タイトル「デスストーカー」
※作:輝夜魔仮


追ってくる
追ってくる
砂地に黄色い流星走る

唯逃げる
唯逃げる
砂塵を巻き上げひた走る

追ってくる
追ってくる
死纏う勾玉私に迫る

唯逃げる
唯逃げる
足取る死は不定形に絡み

追ってくる
追ってくる
時限の液が注がれる

唯逃げる
唯逃げる
迫る運命必死に逃げる

回ってくる
回ってくる
末端から消えてゆく


焼けつく砂漠、風が呻く夜 星明かりの下、忍び寄る影 黒曜石の甲殻、研ぎ澄まされた毒針
デスストーカー、砂漠の死神
獲物を狙う、冷徹な眼差し 一歩、また一歩、静かに、しかし確実に 毒液が脈打ち、命を刈り取る準備 その尾は、死の宣告を告げる鎌
岩陰に潜み、時を待つ戦士 弱き者の悲鳴は、彼には届かない ただ、本能のままに、生を貪る 砂漠の食物連鎖、頂点に君臨する者
容赦ない一撃、貫かれる命 苦痛に歪む顔、しかし後悔はない デスストーカーは、ただ己の存在を全うする 生と死の境界線で、踊り続ける蠍
夜が明ける頃、影は消え去る 残されたのは、乾いた砂と、沈黙 デスストーカーは、また次の闇へと潜む 砂漠の掟を、体現する孤独な魂
66.7%33.3%
No.2 テーマ「聴く抗うつ薬」タイトル「聴覚からの矯正」
※作:照日晴太


午前三時半
ねむれる時機をどこかになくし
明かりの消された居間の隅
体育座りにイヤホン嵌めて
おくすり耳から吸入しましょう





あああああああああああああ!!!



脳内
鳴り止まぬ音
絶えぬ
醒めぬ
止まぬ
ことばの多動の渦



……栓をして
上塗りさせて
フレーズが埋め立てた思考
与えられるままの感情に着替え
投函された今朝の朝刊



もとの皮膚は恥ずべきもので
露出していてはなりません
ほら
苹果を齧らずともよいから
まずは真似てみなさい



その調子

♪♫♫

こうすれば
あなたも表面上
まともでいられるのです


耳を澄ます、静寂の彼方
遠くで響く、微かな音の粒子
それは世界を解きほぐす、優しい旋律
張り詰めた心が、少しずつ緩んでいく
ノイズの中から、確かに響く音がある
それは秩序を取り戻す、正確なリズム
歪んだ感情の波を穏やかに均していく
聴覚が、心の傾きを静かに矯正する
雨の音、風のざわめき、鳥のさえずり
自然の調べは、時に抗うつ薬となる
人口の音も、時には心を癒す薬となる
選ばれた音が、内在する痛みを和らげる
鼓膜を震わせる、その振動は
脳の奥深くへと染み渡り
凝り固まった思考を、ゆっくりと解き放つ
聴覚による、静かな、しかし確かな矯正
目を閉じれば、音の世界が広がる
光も形も失われた、純粋な響き
その中で、私は私を取り戻していく
聞くことが、生きる力へと変わる時
62.5%37.5%
No.3 テーマ「柔らかな光の救済」タイトル「すゝめ」
※作:てんあぬ。


「君は」

雀は私の足下で佇んでいた。少しばかり首を傾けていた。
今こそ羽を広げよう
君は自由なのだから
目に光を宿して私を見る。顎の羽が長く揺れている。オスなのだろうか。
今こそ足を離すべきなのだ
全ての離れるべきものから
鳥にとっては、歩く方がいいと聴いたことがある。飛ぶ行為はやはり負担を掛けるのだと。
今こそ光を追い求めよう
それこそが君の意味だから
自身の危険から遠ざかる時に飛ぶのだとか。しかし私はそれに何か違うものを感じてならない。

目が眩む
君には眩しすぎる光だった様だ
私には君が愚かに見えてならない。全ての生物は光へと、生きるために向かうものだ。
体が竦む
君は縛られてしまった様だ
君は、闇を植え付けられていたのだろうか。それでも、この世界は光に溢れている。
光を持たない
君は生を手放した様だ
それでも、微かな光は私と君に味方している。

「チュンッ」


夜明けの空に、ちいさな点が舞う
それは一羽のすずめ、震える声でさえずる
まだ暗い街に、響く小さな歌声
凍える心に、そっと灯る微かな光
瓦礫の山に、ひとり佇む影
失われたものばかり数えて、うずくまる
その肩に、ふわりと降り立つすずめ
やわらかな羽が、そっと触れる絶望
「すすむんだ、すすむんだ」
そう、聞こえた気がした
かすかな歌声が、心の奥底に染み渡る
もう一度、顔を上げてみようか
さえずりは続く、希望の調べ
凍てついた心を溶かし、光を呼び覚ます
小さな命が、大きな意味を運んでくる
それは、私を救済する、かすかな祈り
空へ羽ばたく、すずめの姿
その軌跡をたどるように、歩き出す
一歩、また一歩、確かな足取りで
すすむんだ、たとえ小さな一歩でも
83.3%16.7%
No.4 テーマ「景色から抽象化」タイトル「雲の隙間」
※作:如月琴希


いつものように歩く帰り道

白の隙間から、薄い蒼がのぞく
やがてそれは、濃い藍色に変わる

濃く、薄く、濃く
移り変わるのは、どれも同じ

その雲の隙間も、こわれたように

全ては常ではいられない
全ては変らずにいられない


アスファルトの熱が揺らめく午後
見上げれば、青が滲むキャンバス
白い絵の具を散らしたような景色が
ゆっくりと、形を変えていく
一瞬の煌めき、抽象化された光
それは世界を切り裂く、鋭いナイフのよう
影が長く伸び、コントラストが際立つ
具体的な空が、一瞬にして概念へと昇華する
鳥のさえずりも、車の音も遠のき
ただ、光と影のドラマが繰り広げられる
思考は止まり、感情は薄れていく
残るのは、純粋な視覚の情報だけ
形は意味を失い、色は感情を脱ぎ捨てる
雲の隙間は、無限の可能性を秘めた窓
そこから覗くのは、現実の断片か
それとも、心の奥底に眠る、未だ見ぬ世界か
やがて光は翳り、隙間は閉じていく
日常が戻り、景色はまた具象へと還る
けれど、あの瞬間の抽象は
確かに心に刻まれた、新たな視点
66.7%33.3%


まとめ
AIの詩には、何と形容すべきか、いかにも翻訳らしいというか、そんな印象を受けます。また、説明しすぎな感じもAIの特徴と言えましょうか。
まずAIのそれを見て目につくのは、表現の単調さ。記号や改行の使い方といった視覚要素はまだ人間の専売特許のようです。そういう意味では可読性が全く違う。勿論それは高ければ良いというものでもないですが、文字列全体を見たときの雰囲気とか印象といったものは変わってきます。全体的な傾向として、人間の詩の方が一行の文字数は少ないようです。
言葉遣いとか、言い回しとかにも着目してみますと、AIのそれは体言止めを多用しています。体言止めというのはリズムを生む手法としては有用ですが、それだけで単調な印象を脱するには至らないし、むしろそれによって単調さが生まれている節も見受けられます。尤も、単調さには他の要因も関わってきます。たとえば、読点を多用した文章が多い点などもその一つではあります。このような冗長さを改善する手段としては、たとえば流れを意図的に崩す箇所などを設けることが挙げられますが、どうやら現在のAIではそこまではできないようです。

投票結果を見てみますと、すべてのテーマで部員の作品がAIの作品に勝利していますから、そこは文芸部員としての面目が保たれたと云えましょうか。
進歩のめざましい分野ですから、AIが今後も進歩していくことはもはや自明です。今は人間が勝てていても、将来的にAIが傑作を生み出すということは考えられます。そのとき我々は、何を以て感動させられればよいのでしょうか。
心動かされた作品がAIの手によるものであったとして、そのとき我々の心を揺さぶるのはいったい何なのでしょう。誰かの価値観や感情ではなく、蓄積された情報に魂を揺さぶられるとき、「詩情」の定義にも変化が起きるのかもしれません。


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